大判例

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東京高等裁判所 平成7年(ネ)3778号 判決

横浜市中区簑沢一九番地

控訴人

田城勇

東京都新宿区市谷田町一丁目四番地

被控訴人

株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント

右代表者代表取締役

松尾修吾

東京都渋谷区神宮前二丁目二一番一号

被控訴人

ビクターエンタテインメント株式会社

右代表者代表取締役

富塚勇

東京都港区北青山三丁目一番二号

被控訴人

株式会社イーストウエスト・ジヤパン

右代表者代表取締役

小杉理宇造

東京都世田谷区池尻三丁目二八番八号

被控訴人

株式会社フォーライフレコード

右代表者代表取締役

後藤豊

東京都千代田区四番町七番地三

株式会社トイズファクトリー

右代表者代表取締役

井出孝光

東京都港区北青山二丁目七番九号

被控訴人

株式会社メルダック

右代表者代表取締役

川合眞治

東京都港区赤坂二丁目二番一七号

被控訴人

東芝イーエムアイ株式会社

右代表者代表取締役

乙骨剛

東京都港区赤坂四丁目一四番一四号

被控訴人

日本コロムビア株式会社

右代表者代表取締役

高野宏

東京都目黒区大橋一丁目八番四号

被控訴人

ポリドール株式会社

右代表者代表取締役

折田育造

東京都新宿区余丁町三番八号

被控訴人

株式会社アポロン

右代表者代表取締役

山科誠

東京都中央区入船二丁目一番一号

被控訴人

株式会社ポニーキャニオン

右代表者代表取締役

伊地知彬

右一一名訴訟代理人弁護士

岡邦俊

小畑明彦

"

主文

原判決を取り消す。

本件訴え(当審における新たな請求に係る訴えを含む。)をいずれも却下する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  本件を横浜地方裁判所に差し戻す。

3  控訴人が被控訴人らに対し損害賠償請求権を有することを確認する。

二  被控訴人ら

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴人の当審における新たな請求を棄却する。

第二  当事者双方の主張は、控訴人の当審における主張として次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」一項及び二項に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人の当審における主張は、後記二のほか、別紙「控訴状」(写)中「理由」欄に記載のとおりである。

二  当審において追加した新たな請求についての請求原因は、原判決添付の別紙のうち「請求の原因」欄に記載のとおりである。

第三  証拠関係は、原審における訴訟記録中の証拠目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  まず、別紙「控訴状」(写)のうち「理由」欄に記載の控訴人の主張について検討する。

1  別紙「控訴状」(写)中の「理由」一、二、七について

判決書において、民事訴訟法一九一条一項の「事実及争点」を記載するのに、必ずしも右の標題を付す必要はなく、また、原判決には、右の「事実及争点」として記載されるべき内容(当事者間に争いのない事実と争いのある事実)が「事実及び理由」中に記載されていることが明らかであるから、控訴人の右主張は失当である。

2  同理由三、四について

控訴人の主張する別件訴訟における事由が、本件訴訟における審理不尽もしくは原判決における判断遺脱の理由となるものではないから、控訴人の右主張も失当である。

3  同五について

控訴人の右主張に係る被控訴人の答弁内容は、本件における控訴人の主張事実を争う趣旨であることが明らかであるから、そのことに基づく原判決の内容又は原審における訴訟手続に、控訴人主張の違法はない。

4  同六について

別件訴訟における事由が本件訴訟に当然に影響を及ぼすものでないことは前記2と同様であり、また、立証責任の点についても、後記二における判断のとおり、そのことが本件訴訟の結論に影響を与えるものでもないから、控訴人の右主張も失当である。

5  同八について

原判決原本に原審裁判官の署名、捺印があることは記録上明らかであるから、控訴人の右主張も失当である。

二  次に、控訴人の当初からの請求について検討する。

1  原判決添付の別紙に記載の「請求の趣旨」一項の請求については、差止めの対象、内容が特定されているものと認めることはできないから、不適法なものというべきである。

2  同二項ないし五項の請求は、不正競争防止法六条ないしは民事訴訟法三一二条に基づく文書の提出を求めるものと解されるが、右については、訴訟手続の一環として決定をもって判断されるべき事項であるから、右条項に基づき、訴えをもって右文書の提出を求めることは、権利保護の利益を欠き許されないものであることは明らかである。

3  同六、七項の請求については、少なくともその請求内容が具体的なものではなく、特定を欠くものというべきであるから、これも不適法なものといわざるをえない。

4  同八項の請求については、その記載内容からみて、不正競争防止法ないしは民事訴訟法に基づく前記2と同様の請求であるとも解されるが、そうであれば、前記2と同様の理由により不適法なものというべきであり、また、仮に、右とは異なる請求であるとしても、請求に係る計算書類が特定されているものとはいえないから、いずれにしても不適法といわざるをえない。

三  続いて、控訴人が当審において追加した新たな請求について検討を加えるに、右請求は、給付請求権の存在について確認を求めるというものであるが、その金額の特定がない点においてそもそも不適法というべきである。

また、給付請求権の権利者が、右権利に基づいて給付を訴求することなく、その確認を求めるということは、特段の理由がない限り、訴えの利益を欠くものと解すべきところ、本件においては、右の訴えの利益を認めるに足りる格別の事情も見当たらない(控訴人は、当審の第一回口頭弁論期日において、右のとおり確認を求めるのは、手数料の貼付を避けるためである旨を述べるが、そのことにより、右の訴えの利益が肯定されるものでないことは当然である。)から、その点においても、右請求は不適法というべきである。

四  以上によれば、控訴人の当初からの請求及び当審における新たな請求はいずれも不適法であるから、控訴人の当初からの請求を棄却した原判決を取り消した上、右請求を却下するとともに、控訴人の当審における新たな請求についても却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司)

控訴状

横浜市中区簑沢十九番地

控訴人 田城勇

東京都新宿区市谷田町一丁目四番地

被告 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント

右代表者代表取締役 松尾修吾

東京都渋谷区神宮前二丁目二一番一号

同 ビクターエンタテインメント株式会社

右代表者代表取締役 富塚勇

東京都港区北青山三丁目一番二号

同 株式会社イーストウェスト・ジャパン

右代表者代表取締役 小杉理宇造

東京都世田谷区池尻三丁目二八番八号

同 株式会社フォーライフレコード

右代表者代表取締役 後藤豊

東京都千代田区四番町七番地三

同 株式会社トイズファクトリー

右代表者代表取締役 井出考光

東京都港区北青山二丁目七番九号

同 株式会社メルダック

右代表者代表取締役 川合眞治

東京都港区赤坂二丁目二番一七号

同 東芝イーエムアイ株式会社

右代表者代表取締役 乙骨剛

東京都港区赤坂四丁目一四番一四号

同 日本コロムビア株式会社

右代表者代表取締役 高野宏

東京都目黒区大橋一丁目八番四号

同 ポリドール株式会社

右代表者代表取締役 折田育造

東京都新宿区余丁町三番八号

同 株式会社アポロン

右代表者代表取締役 山科誠

東京都中央区入船二丁目一番一号

同 株式会社ポニーキャニオン

右代表者代表取締役 伊地知彬

右被告ら訴訟代理人弁護士

岡邦彦

同 小畑明彦

平成七年七月二十八日

田城勇

東京地方裁判所御中

平成七年ワ第一一一九号事件の判決に付控訴を為す旨

平成七年七月十四日付り平成七年ワ第一二一九号事件の判決で、原告の請求をいすれも棄却、訴訟費用は原告の負担とするとしたものに付控訴を為す。

理由

一、 判決の中で「事実及で理由」とあるのは、「事実及ひ争点」とすぺきで、民事訴訟法第一九一条一項の二に違背し不当でありかフ違法である。

二、 当判決書は争点の記載を事実上欠いているために、判決書としての要件を満たしておらず不当であり違法である。また、かくのでとき判決書に原告が拘束されるのは不当である。

三、 同時審理の別訴平成六年ワ第三五三九号事件で、甲二号証及び検証の申出を原告がなしたのにもかかわらず、原審は何らの釈明もなしに検証をなさず、それによって証拠が採用されなくなっていた。これがために、本事件で前述の甲二号証及び検証の申出記載の検証物の証拠の援用が不可能となり、本事件での間接的な証拠の一つが欠損したまま原審の判決が下これた。したがって審理不十分であり原審の判決は不当でありかつ違法である。また、審理不十分であることから理由不備ともなっており不当でありかつ違法である。

四、 平成七年六月十八日の口頭弁論時に同時審理の別訴被告株式会社テレビ神奈川が同じく別訴状の認否について「認めます」と発言したことが解釈されなかった。これが為に本事件での証拠の援田に支障が生じた、したがって本判決での判決に影響を及ぼすべき重要なる事項に付判断を遺脱しており、をれによって不当かつ違法な判決書が下された。

五、 判決書の「事実及び理由」の二で、原審は、被告うは原告の主張する請求原因に対して不知ないし否認する、としてかような事実に基づき判断をなし、判決を下した。しかし、被告らが一体何が不をで何が否認であるのか全く不明であり、かような不明朗な事実から下された本判決は、判断に付明らかに事実誤認を包含しており、証拠援田に付法の解釈の誤ある。したがって不当であり違法である。また、この件は、原審が不当に釈明確を行使しなかったことによるものでもあり、釈明義務違反であり不当でありかつ違法である。

六、 判決書中の「当裁判所の判断」の第一段落は、次の理由により不当である。

(一)「原告が請求している音楽著作権」は、同時審理の別訴平成六年ワ第三五三九号事件でをの一部が平成七年四月十日付で目録として既に提出されている事。

(二)「営業秘密」については、同じく平成六年ワ第三五三九号事件平成七年三月二十七日付訴えの変更の申出で、その内容について明示されていること

(三)「原告の加工した被告らの著作物等」は、現在平成七年モ第二〇五八号事件の本件本案訴訟の訴状の請求の原因で明らかにしているもので、当然平成七年ワ第一二一九号事件に関連するもので、これを判断の中で解釈していることは経験則上通当でありかつ妥当なものである。しかし、をの解釈の内容が不十分であり事実認識が不十分となっていること。

(四)本件は被告らの特殊な不法行為による事件でありかつまた被告らの企業責任を問う事件である。こうしたケースでは、立証責任は被告らが負担することが民法七一五条の援用をまつほでもなく相当であるのが判例である。したがって判決書中「立証責任を被告らに負担させる根拠が到底理解できない」としていることは判例法違反で違法でありかつ不当である。

七、 当判決書は事実の記載を実質的に欠いており、民事訴訟法第一九一条の判決書の要件や趣旨を逸脱しており不当でありかつ違法である。

八、 判決書に裁判官の捺印がなく、また他の裁判官の事由を記載した署名捺印もないことから民事訴訟法第一九一条三項に違背し違法である。

以上の理由、その他により原告は原審の判決の取消及び差し戻しを求める。

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